反対側の脳で機能代償が生じるメカニズム

 脳の可塑性に関する興味深い研究についての報道があった。日経プレスリリースより。

生理学研究所脳梗塞などによって失われた脳の機能が効果的なリハビリで回復につながることを照明


脳梗塞でも反対側の脳が失われた機能を"肩代わり"
−神経回路のつなぎ換えと機能回復を順々に促進−


 最近の脳科学の進展によって、脳梗塞などによって失われた脳の機能も、効果的なリハビリテーションによって機能回復につながることがわかってきました。今回、自然科学研究機構生理学研究所の鍋倉淳一教授の研究グループは、脳梗塞後には反対側の脳が失われた機能を“肩代わり”することを証明し、また、その脳の機能回復の過程の詳細を、マウスを使って明らかにしました。脳の神経回路の「つなぎ換え」(再編)や機能回復は、順序よく整然としたプロセスで起こっていることが初めて明らかになりました。日本でも患者数250万人にも上るといわれる脳卒中後の効果的なリハビリテーション方法開発に役立つ成果です。米国神経科学学会誌(Journal of Neuroscience、8月12日号)で報告されます。


 詳細は、脳梗塞でも反対側の脳が失われた機能を肩代わり —神経回路のつなぎ換えと機能回復を順々に促進—/自然科学研究機構 生理学研究所に記載されている。


 以前、日本リハビリテーション医学会で、失語症の回復についての次のような講演があったことを覚えている。
 左半球広範囲損傷ながら、失語症が劇的に回復した患者がいた。十数年後、反対側の脳梗塞を起こした時、失語症が急速に悪化した。考察として、右半球で言語機能を代償していたのではないかということだった。


 今回、基礎研究において、反対側の脳で機能代償が生じている仕組みが一部明らかにされた。機能的画像診断の発達で、脳内で起こっている変化が可視化されるようになってきている。1990年代頃までは、脳はいったんダメージを受けると回復しないということばかり強調されていた。最近は、脳の可塑性に関する知見に基づいた様々な治療法が試みられるようになっている。リハビリテーション医学の治療技術が根本から見直される可能性がある。