「寝返り」の定義変更

 一昨日に引き続き、平成20年度診療報酬改定に係る通知等について中、「平成20年度診療報酬改定関連通知の一部訂正について New 6月2日」より、看護必要度の変更について。
  全体版(PDF:3,584KB)の14、16、17ページ目に看護必要度に関する情報がある。一般病棟用、ICU用、ハイケアユニット用いずれも、寝返りに関する規定が変わった。

寝返り 項目の定義


 寝返りが自分でできるかどうか、あるいはベッド柵、ひも、バー、サイドレール等の何かにつかまればできるかどうかを評価する項目である。
 ここでいう「寝返り」とは、きちんと横向きにならなくても、横たわったまま左右のどちらかに向きを変える仰臥位から(左右どちらかの)側臥位になる動作である。


 完全に側臥位にならない限り、寝返りは自立と判断されないことになった。
 その他、一般病棟用の口腔清潔、ハイケアユニット用の蘇生術の施行、口腔清潔、診療・療養上の指示が通じるで、語句の修正がある。


 看護必要度の弊害(まとめ)というエントリーを記載した時、看護必要度には少なくとも以下の5種類があると記述した。


 診療報酬に関係しているのは、「看護必要度Ver.3」以外の4種類である。「寝返り」に関しては全て共通だったが、今回は、回復期リハビリテーション病棟用の看護必要度「日常生活機能評価」は変更がなかった。


 看護必要度における判断基準変更で述べたことを繰り返す。

 診療報酬のたびに、判断基準がころころ変更される評価票に信頼性はない。看護必要度という幻想が、日本の医療に多大な弊害を及ぼしている。


 今回の変更は、年度途中に行われた。さらに、看護必要度という名称がついていないためか、「日常生活機能評価」だけ仲間はずれにされている。
 診療報酬に多大な影響を及ぼす看護必要度が、官僚の恣意的判断でたびたび変更されてしまっている。看護必要度は、信頼性・妥当性が失われたとしか言えない。しかし、現場スタッフは看護必要度の研修を受け、既に日常業務の中で評価が行っている。おそらく、「寝返り」の定義が変更されたことは気づかないだろう。多忙な中、看護必要度評価を記録しなければならない病棟スタッフに同情する。

地域連携クリティカルパスと日常生活機能評価

 以前、中医協答申−地域連携診療計画の評価の拡大と見直しについてというエントリーで、「地域医療計画には、退院基準、転院基準及び退院時日常生活機能評価を明記する。」という改定がされたことを述べた。関係する部分を厚労省通知から引用する。

B005-2 地域連携診療計画管理料、B005-3 地域連携診療計画退院時指導料
(1) 地域連携診療計画管理料は、地域連携診療計画の対象疾患の患者に対し、地域連携診療計画に沿って治療を行うことについて患者の同意を得た上で、入院後7日以内に地域連携診療計画に基づく個別の患者ごとの診療計画を作成するとともに、説明し、それを文書にて患者又は家族に提供した場合に、転院時又は退院時に計画管理病院において算定する。患者に交付した診療計画の写しを診療録に貼付すること。
(2) 地域連携診療計画退院時指導料は、地域連携診療計画の対象疾患の患者に対し、患者の同意を得た上で、地域連携診療計画に基づく退院後の診療計画を作成するとともに、説明し、それを文書にて患者又は家族に提供した場合であって、計画管理病院に対し文書にて報告した場合に連携する保険医療機関にて退院時に算定する。患者に交付した診療計画の写しを診療録に貼付すること。


 以下が追加された部分である。
(3) 地域連携診療計画管理料を算定する、計画管理病院からの転院時及び地域連携診療計画退院時指導料を算定する、連携医療機関からの退院時においては、別紙様式10に定める日常生活機能評価を行い、その結果を地域連携診療計画書に記入すること。また、連携保険医療機関が退院時に行った日常生活機能評価の結果は、計画管理病院に対し文書にて報告すること。

* 別紙様式10(回復期リハビリテーション病棟用の別紙様式21と全く同じ)


 地域連携診療計画管理料を算定する計画管理病院でも、転院時に「日常生活機能評価」を義務づけられる。7対1入院基本料を算定している病院では、「一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価票」を毎日記入しているが、これとは全く別物であり、改めて「日常生活機能評価」を行わなければならない。看護労働負担が増すことになる。
 これまで運用してきた地域連携診療計画書の改定が求められているが、関連病院が集まって議論する時間はない。当面、「日常生活機能評価」を別刷りにして貼付するという方法でしか対応できないだろう。

日常生活機能評価19点版と20点版

 日本医師会が作成した、改定診療報酬点数表参考資料(平成20年4月1日実施)では、日常生活機能評価は0-20点で採点することになっている。一方、厚生労働省より出された平成20年度診療報酬改定に係る通知等についてという資料では、日常生活機能評価は0-19点となっている。全国回復期リハビリテーション病院連絡協議会に参加した看護師からの情報では、19点版の方が使用されるとのことである。


 どうやら、平成20年度診療報酬改定に係る通知等についてを公表する前に、厚労省は急遽評価表を変更したようである。日本医師会版改定診療報酬点数表参考資料(平成20年4月1日実施)には誤った情報が掲載されたことになる。そのうち、正誤表が送付されてくることだろう。


 朝礼暮改と言ってよいのか、ドタバタ劇と言った方が良いのか、なんともやりきれない顛末である。回復期リハビリテーション病棟だけではなく、地域連携診療計画の根幹に関わる基本的な評価表の信頼性がこれでいっそう薄らぐことは間違いない。


 なお、全国回復期リハビリテーション病院連絡協議会研修に参加した看護師からの情報では、日常生活機能評価は毎週採点するということになっていた。しかし、厚労省資料では、「入院時と退院時又は転院時に評価を行うこと」となっている。
 一方、7対1入院基本料を届けている病棟で使用される「一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価表」は、ICU用・ハイケアユニット用と同様、毎日評価することが義務づけられている。看護師は、7対1入院基本料で増員された分、記録記載に追われることになる。

看護必要度における判断基準変更

 日本医師会編「改定診療報酬点数表参考資料(平成20年4月1日実施)」が届いた。厚労省の通知では、前回との比較が困難だったが、本資料ではどこが変更されたかがよくわかる。


 驚いたことがある。看護必要度の弊害(まとめ)というエントリーを記載した時、看護必要度には少なくとも以下の5種類があると記述した。


 上記のうち、「重症度に係る評価票」は2002年度から、「重症度・看護必要度に係る評価票」は2004年度から、診療報酬算定に関する基準として既に導入されている。
 診療報酬に係る評価票の記入にあたっての注意事項として、次のような記載がされている。

 評価票の記入は、院内研修を受けたものが行うものであること。なお、院内研修は、次に掲げる所定の研修を終了したもの(修了証が交付されているもの)若しくは評価に習熟したものが行う研修であることが望ましい。


 当然のことながら、厳密さが求められている以上、評価点数や判断基準には変更がない安定したものでなければいけない。しかし、2006年度版と2008年度版を比べてみると、ICU用の「重症度に係る評価票」もハイケアユニット用「重症度・看護必要度に係る評価票」も変更がなされている。


 例えば、ICU用の「重症度に係る評価票」は、2006年度版では、A得点0-18点、B得点0-8点で採点し、A得点が3点以上、またはB得点が5点以下という判断基準となっていた。
 2008年度版では、A得点は0-18点で変化がないが、B得点の採点方法が変更されている。今までは、「寝返り」ができるが2点だったが、2008年度からは「寝返り」ができるが0点となり、重症度点数配分を逆にしている。このため、判断基準もA得点が3点以上、またはB得点が3点以上となっている。


 ICU用の「重症度に係る評価票」もハイケアユニット用「重症度・看護必要度に係る評価票」におけるB得点の判断基準の中に、次のような記述がある。

 評価は、日勤時間帯における患者の状態を観察して行い、推測は行わない。


 この記載は、2008年度版では、次のように改変されている。

 評価は24時間(前日の評価後から本日の評価時刻まで)の記録と観察に基づいて行い、推測は行わないこと。


 患者の状況は、変化しうる。日勤帯だけの評価が24時間での評価に変わっただけで、採点が異なってくる。2006年度に院内研修を受けた者は、2008年度あらためて研修を受けないと、誤った評価をしてしまうことになる。


 診療報酬のたびに、判断基準がころころ変更される評価票に信頼性はない。看護必要度という幻想が、日本の医療に多大な弊害を及ぼしている。

看護必要度の弊害(まとめ)

 看護必要度には、少なくとも5種類ある。
 「看護必要度 第2版」を読んでのエントリーで取りあげたのは、次の3つである。

 「重症度に係る評価票」は2002年度から、「重症度・看護必要度に係る評価票」は2004年度から、診療報酬算定に関する基準として既に導入されている。


 2008年度診療報酬改定にあたって導入されるのは、次の2種類である。

 前者に関しては7対1入院基本料の基準の見直しと看護必要度で、後者に関しては回復期リハビリテーション病棟入院料Iの施設基準で紹介した。
 「一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価票」に関しては、「重症度・看護必要度に係る評価票」調査結果と7対1入院基本料で次のような疑問を提示した。

 「重症度・看護必要度に係る評価票」のA得点は7対1入院基本料病棟の方が高得点である。しかし、10対1入院基本料病棟との差はない。
 一方、B得点に関しては、どの項目をとってみても7対1入院基本料病棟より13対1入院基本料病棟の方が看護必要度が高くなっている。


 以上の結果より、次のような推論が可能である。
(1) ハイケアユニット用「重症度・看護必要度に係る評価票」が一般病棟の看護必要度にも通用する。実際に看護師配置数を増やすべきなのは、現時点で7対1入院基本料を算定している比較的規模の大きい病院ではなく、高齢者で要介護者が多い13対1入院基本料算定中小規模病院である。
(2) ハイケアユニット用「重症度・看護必要度に係る評価票」は一般病棟の看護必要度適用に際し不適切である。7対1入院基本料を算定病棟の看護必要度は本当は高い。別の評価票を用いる必要がある。


 おそらく、前者が正しいのだろう。いずれにせよ、どのように加工しようとも、「重症度・看護必要度に係る評価票」の項目を用いて、7対1入院基本料算定病棟を絞り込むことは不適切である。


 回復期リハビリテーション病棟用「日常生活機能評価」にいたっては、目的外使用としか言いようがない。
 「看護必要度」とは、「入院患者に提供されるべき看護の必要量」をいう。「看護必要度」を正確に把握し、適切な看護師配置を評価するために用いられる。いわば、科学的根拠に基づく要員管理のツールであり、主体は看護職である。どの程度看護師にとって負担がかかるかという視点でデータが集められている。したがって、「看護必要度」を患者の重症度評価のように扱うことは、誤りである。
 リハビリテーション医療の世界には、FIMやBIなど、信頼性・妥当性が確認された評価法がある。FIMには特許の問題があるが、BIなら使用できる。ハイケアユニットを対象とした「重症度・看護必要度」の一部分(B得点)のみを取り出して、「日常生活機能評価」と名前を変え、回復期リハビリテーション病棟の重症度評価に使用することには無理がある。さらにいうと、「移動」の部分が3段階評価から2段階評価となっているが、理由について一切記載がなく、恣意的な改変がなされている。


 「看護必要度Ver.3」の著作権は、看護必要度研究会に属している。看護必要度研究会のメンバーは、回復期リハビリテーション病棟用「日常生活機能評価」のような目的外使用にも、恣意的な改変にも何ら抗議をしていない。そればかりか、一般急性期病院や回復期リハビリテーション病棟に「看護必要度」が拡大されたことを成果として誇っている。


 「重症度・看護必要度」の導入と実務対応セミナー <講義+演習>より、引用する。

<開催にあたって>
 これまで、ICUおよびハイケアユニット入院管理料には看護必要度の項目を用いた評価が行なわれていましたが、08年度診療報酬改正によって、一般急性期病棟においても「7対1入院基本料」の算定のための要件となり、さらに回復期リハ病棟においても、看護必要度による評価が加算の必須要件となりました。このように看護必要度の評価項目を用いた患者評価は、ますます重要になってきています。
 そこで、すでに看護必要度の評価者研修を受けられた看護管理者の方々を対象に、看護必要度をどのように看護管理に活かすかという看護必要度による患者データの評価と、その利用のための看護管理者研修を行うことを計画しました。
 本セミナーは、看護必要度による評価方法の研修を修了した方々に対して、看護必要度データの解釈と、その活用方法に関する初めてのアドバンスコースとして看護管理者を対象に実施します。どうぞ皆様のたくさんのご参加をお待ちしております。


 医療はチームで行うものであり、主体は患者である。「看護必要度」を用いて評価できるのは、看護師配置についてだけである。しかも、開発過程からわかるように、調査対象となった病棟は、「看護の質が高い」急性期病院のICU、ハイケアユニット、そして急性期病棟であり、回復期リハビリテーション病棟や療養病棟を対象としたデータは収集されていない。


 看護必要度研究会は、「看護必要度」であらゆる種類の病棟の管理ができるという幻想を捨て去るべきである。このままでは、看護師による研究は恣意的で非科学的なものである例証として、後世にまで伝えられることになる。

回復期リハビリテーション病棟入院料Iの施設基準

 厚生労働省より、平成20年度診療報酬改定に係る通知等についてという資料が提示された。回復期リハビリテーション病棟入院基本料に関係する部分を紹介する。
 なお、診療報酬の概要については、中医協答申−回復期リハビリテーション病棟に対する質の評価の導入で詳しく取りあげたため、今回は算定要件に関する部分についてのみ記載する。


 基本診療料の施設基準及びその届出に関する手続きの取扱いについて(保医発第03005002号)の本文PDFファイルページ52−53ページに回復期リハビリテーション病棟入院料の施設基準がある。

 重症患者の評価に関わる日常生活機能評価については、次のように記載されている。

 当該病棟への入院時等に測定する日常生活機能評価は、別添6の別紙22を用いて測定すること。また、当該日常生活機能評価表の記入は、院内研修を受けたものが行うものであること。なお、院内研修は、次に掲げる所定の研修を終了したもの(修了証が交付されているもの)若しくは評価に習熟したものが行う研修であることが望ましい。
ア 国及び医療関係団体等が主催する研修であること(1日程度)
イ 講義及び演習により、次の項目を行う研修であること
(イ) 日常生活機能評価の考え方、日常生活機能評価表の構成と評価方法
(ロ) 日常生活機能評価に係る院内研修の企画・実施・評価方法

* 別添6の別紙22

 中医協審議当時使用されていた日常生活機能「指標」という言葉から、日常生活機能「評価」と名称が変更されている。両者を比較してみると、総点20点から19点となっている。「移動」の部分が3段階評価から2段階評価となっているが、理由についての記載はない。

 毎年7月において、1年間(前年7月から6月までの間。)に当該入院料を算定する病棟に入院していた患者の日常生活機能評価について、別添7の様式49の4により地方社会保険事務局長に報告を行うこと。ただし、平成20年7月の報告は要しないこと。

* 別添7の様式49の4


 回復期リハビリテーション病棟入院料Iの施設基準に関して、次の記載がある。

(1) 当該病棟が回復期リハビリテーション病棟入院料Iを算定する場合、重症の患者(別添6の別紙21に定める日常生活機能評価で10点以上の患者をいう。以下この項において同じ。)が新規入院患者のうち1割5分以上であること。なお、その割合は、次のアに掲げる数をイに掲げる数で除して算出するものであること。
ア 直近6ヶ月間に当該回復期リハビリテーション病棟に新たに入院した患者(第2部通則5に規定する入院期間が通算される再入院の患者を除く。)のうちの重症の患者数
イ 直近6ヶ月間に当該回復期リハビリテーション病棟に新たに入院した患者数(第2部通則5に規定する入院期間が通算される再入院の患者を除く。)


(2) 他の保険医療機関へ転院した者等とは、同一の保険医療機関の当該入院料に係る病棟以外へ転棟した患者、他の保健医療機関へ転院した患者及び介護老人保健施設に入所する患者のことをいう。なお、退院患者のうち他の医療機関へ転院した者等を除く者の割合は、次のアに掲げる数をイに掲げる数で除して算出するものであること。
ア 直近6ヶ月間に退院した患者数(第2部通則5に規定する入院期間が通算される再入院の患者を除く。)のうち、他の保険医療機関へ転院した者等を除く患者数
イ 直近6ヶ月間に退院した患者数(第2部通則5に規定する入院期間が通算される再入院の患者を除き、他の保険医療機関へ転院した者等を含む。)。ただし病状の急性増悪等により、他の保険医療機関(当該保険医療機関と特別な関係にあるものを除く)での治療が必要になり転院した患者及び死亡退院した患者を除く。なお、当該患者の数及び各患者の病状詳記の一覧を、届出の際に別途添付の上提出すること。)*1


* 別添7の様式49の2


 「在宅」とは、「診療報酬算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」中の区分番号「C001」在宅患者訪問診療料(2)ア及びイに掲げる施設等と同様である。「医師が常駐していない施設」のことを指し示している。

区分番号「C001」在宅患者訪問診療料(2)
ア 自宅、社会福祉施設又は障害者施設等で療養を行う患者
イ 次に掲げる患者(以下「居住系施設入居者等である患者」という。)
(イ) 次に掲げるいずれかの施設に入居又は入所している患者
[1] 老人福祉法(昭和38年法律第133号)第20条の4に規定する養護老人ホーム([5]に規定する特定施設を除く。)
[2] 老人福祉法第20条の6に規定する軽費老人ホーム([5]に規定する特定施設を除く。)
[3] 老人福祉法第29条第1項に規定する有料老人ホーム([5]に規定する特定施設を除く。)
[4] 老人福祉法第20条の5に規定する特別養護老人ホーム
[5] 特定施設(介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第11項に規定する特定施設及び第19項に規定する地域密着型特定施設のことをいい、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第192条の2に規定する外部サービス利用型指定特定施設入居者生活介護を受けている患者が入居する施設を含む。)
[6] 高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則(平成13年国土交通省令第115号)第3条第6号に規定する高齢者専用賃貸住宅([5]に規定する特定施設を除く。)
(ロ) 次に掲げるいずれかのサービスを受けている患者
[1] 介護保険法第8条第9項に規定する短期入所生活介護
[2] 介護保険法第8条第17項に規定する小規模多機能型居宅介護(指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第63条第5項に規定する宿泊サービスに限る。)
[3] 介護保険法第8条第18項に規定する認知症対応型共同生活介護
[4] 介護保険法第8条の2第9項に規定する介護予防短期入所生活介護
[5] 介護保険法第8条の2第16項に規定する介護予防小規模多機能型居宅介護(指定地域密着型介護予防サービスの事業の人員、設備及び運営並びに指定地域密着型介護予防サービスに係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準(平成18年厚生労働省令第36号)第44条第5項に規定する宿泊サービスに限る。)
[6] 介護保険法第8条第17項に規定する介護予防認知症対応型共同生活介護
 ただし、「要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額を算定できる場合」(平成18年3月31日保医発第0331002号)等(以下「給付調整告示等」という。)に規定する場合を除き、医師の配置が義務づけられている施設に入所している患者については算定の対象としない。


 重症患者回復病棟加算の施設基準に関して、次の記載がある。

 重症患者のうち3割以上の者が退院時に日常生活機能評価で3点以上改善していること。なお、その割合は、次の(1)に掲げる数を(2)に掲げる数で除して算出するものであること。
(1)直近6ヶ月間に退院した重症の患者(第2部通則5に規定する入院期間が通算される再入院の患者を除く。)であって、入院時と比較し日常生活機能評価が3点以上改善した患者数
(2)直近6ヶ月間に当該病棟に入院していた重症の患者数


* 別添7の様式49の3


 在宅復帰率など回復期リハビリテーション病棟入院料算定要件の詳細が明らかになった。全身状態不安定のため転棟・転院した場合は、在宅復帰率を引き下げる。老健入所も同様である。一方、特養、グループホーム、ケアハウスなどは自宅扱いのため、在宅復帰率を向上させる。
 回復期リハビリテーション病棟入院料Iをとるために、在宅復帰率を上げるための工夫があちこちで始まる。間違いなく、重症患者で全身状態不安定な者は敬遠される。日常生活機能評価改善が期待できない患者も回復期リハビリテーション病棟に転院できない。退院先からの老健はずしも顕在化する。
 リハビリテーション医療の歪みが顕著となることが明らかになった。今日一日、陰鬱な気分で過ごしている。

「重症度・看護必要度に係る評価票」調査結果と7対1入院基本料

 中医協診療報酬基本問題小委員会(第99回)平成19年10月3日、7対1入院基本料について資料(診-1-2)内に、「重症度・看護必要度に係る評価票」を用いた調査結果のまとめがある。


 一般病棟入院患者、7対1(n=473,136)、10対1(n=169,278)、13対1(n=31,123)のデータである。ちなみに、75歳以上の患者構成比は7対1が34.4%、10対1が39.7%なのに対し、13対1は55.7%と半数と超えている。


 まず、病棟ごとの分布を図に示す。黒が7対1、ピンクが10対1、そして緑が13対1である。



 次にB得点の結果のみ、表にまとめる。

7対1 10対1 13対1 一般病棟用
床上安静の指示:あり  12.9  13.5  13.8   ×
どちらかの手を胸元まで持ち上げられる:できない  7.8  8.5  12.6   ×
寝返り:できない  17.0  18.7  25.3   ○
起き上がり:できない  25.7  28.1  36.8   ○
座位保持:できない  14.0  15.8  18.5   ○
移乗:できない  22.2  25.1  33.0   ○
移動:移動なし  16.5  19.6  24.7   ×
口腔清潔:できない  32.6  34.9  43.4   ○
食事摂取:全介助  13.2  14.5  20.1   ○
衣服の着脱:全介助  21.5  24.3  32.0   ○
他者への意思の伝達:できない  11.0  12.5  18.7   ×
診療・療養上の指示が通じる:いいえ  19.7  21.7  31.8   ×
危険行動への対応:ある  17.1  18.3  16.9   ×


 結果は一目瞭然である。
 「重症度・看護必要度に係る評価票」のA得点は7対1入院基本料病棟の方が高得点である。しかし、10対1入院基本料病棟との差はない。
 一方、B得点に関しては、どの項目をとってみても7対1入院基本料病棟より13対1入院基本料病棟の方が看護必要度が高くなっている。


 以上の結果より、次のような推論が可能である。
(1) ハイケアユニット用「重症度・看護必要度に係る評価票」が一般病棟の看護必要度にも通用する。実際に看護師配置数を増やすべきなのは、現時点で7対1入院基本料を算定している比較的規模の大きい病院ではなく、高齢者で要介護者が多い13対1入院基本料算定中小規模病院である。
(2) ハイケアユニット用「重症度・看護必要度に係る評価票」は一般病棟の看護必要度適用に際し不適切である。7対1入院基本料を算定病棟の看護必要度は本当は高い。別の評価票を用いる必要がある。


 おそらく、前者が正しいのだろう。いずれにせよ、どのように加工しようとも、「重症度・看護必要度に係る評価票」の項目を用いて、7対1入院基本料算定病棟を絞り込むことは不適切である。「モニタリング及び処置等に係る得点(A得点)が2点以上、かつ、患者の状況等に係る得点(B得点)が3点以上の基準を満たす患者を1割以上入院させている場合に算定できる。」という基準はきわめて低く、多くの病院はそのまま7対1入院基本料を算定することができる。そこで持ち出されたのが「医師数が当該病棟の入院患者数に対して10分の1以上であり、かつ医療法標準を満たしている病院以外の病院については、7対1入院基本料の減算措置を講ずる。」という要件であると推測する。


 医師不足、看護師不足問題を放置し、看護必要度で優先順位をつけようとする政策自体に問題がある。科学的装いだけは整えるが、論理的に破綻をきたし、最後に強引に辻褄合わせをする。厚労省の行うことは、要介護認定にせよ、療養病床の医療区分・ADL区分導入にせよ、このような類が多い。