看護必要度、10対1入院基本料病棟にも導入

 引き続き、平成22年度診療報酬改定、資料(総−6)(PDF:646KB)(『骨子における重要課題関連項目(入院)及び「四つの視点」関連項目(入院を中心に)』)より、看護必要度に関わる部分を紹介する。同資料の30ページより。

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急性期の医療機関における入院患者の重症度等の評価について

第1 基本的な考え方
 地域において急性期を担う医療機関において、入院患者の重症度等の状態について評価を行い実情に合わせた適正な配置を行っている病院を評価する。


第2 具体的な内容
 急性期の入院医療を担う一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(一般病棟)、専門病院入院基本料の10 対1入院基本料について、「一般病棟用の重症度・看護必要度」に係る評価票を用い継続的に測定を行い、その結果に基づき評価を行っている場合の加算を新設する。


 看護協会は、厚労省にかなりのコネがあると思える。あらゆる入院料に、看護必要度を導入しようとしている。看護必要度は看護師配置のツールにすぎない。しかし、診療報酬では看護必要度=患者の重症度という誤った概念が幅をきかせている。

日常生活機能評価とバーセル指数との関係

 引き続き、厚生労働省:第26回中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会資料内にある資料(検−2−3)の全体版(PDF:1,059KB)より、退棟患者調査の一部を紹介する。


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看護必要度の弊害(まとめ)(2008年3月13日)


 日常生活機能評価とバーセル指数との関係を示す。


 日常生活機能評価の点数ごとにバーセル指数がどのように分布しているかを箱ひげ図を並べて示している。全体として負の相関関係があるが、ばらつきも大きいことがわかる。特に重症患者判定基準である9点と10点との間には大きな差はない。
 日常生活機能評価の中に、起居移動動作や身の回り動作などADLに関わる項目が含まれている。したがって、一定の相関関係があるのは当然である。しかし、日常生活機能評価には、「床上安静の指示」や「どちらかの手を胸元まで持ち上げられる」といった畑違いの項目が含まれている。また、もともとがハイケアユニット用の看護必要度のB項目である。採点基準では、看護労働上介助をしていない場合には「介助なし(0点)」と判定される。日常生活機能評価とADL評価であるバーセル指数とは異質のものであり、互換性に乏しい。



  総合リハビリテーション37巻5号(2009.05)P.453-460:回復期リハビリテーション病棟での日常生活機能評価表とFIMとの関係で、園田らも同様の内容を指摘している。

〔結語〕日常生活機能評価表はADL評価の側面を有するが,FIMと互換性があるとは言い難く,日常生活機能評価表が何に関する指標であるのか,リハビリテーション成果を表すのか,今後の検討が必要である.


 「日常生活機能評価が何に関する指標であるのか」という問いに即答できるリハビリテーション医療関係者はいない。専門家が理解できない指標をもとにしても、回復期リハビリテーション病棟の質は評価できない。

一般病棟にも成果主義導入をと訴える看護協会幹部の妄想

 「地方ではナースの数が足りない」|ニュース|ロハス・メディカルに、看護必要度に関する新しい動きが紹介されていた。


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 DPCについて専門的に審議するため、中医協・基本問題小委員会の下に設置されている「DPC評価分科会)では、日看協元常任理事の嶋森好子委員(慶応義塾大看護医療学部教授)が「チーム医療の推進」を強く訴え、専門的な知識や経験のある看護師の配置を評価することを求めている。
 日看協には、看護の質向上を目的にした「資格認定制度」があり、「専門看護師」「認定看護師」などの資格がある。


 同分科会で嶋森委員は、専門的な看護師を中心とするチーム医療や手厚い看護体制を進めるため、「重症度・看護必要度による改善率」を指標とすることを要望している。


 嶋森委員が1月21日の同分科会に提出した要望書では、「必要な患者に必要な医療が提供できていない事態が様々な分野で生じており、これらの是正が必要とされている」とした上で、医師不足の問題に触れ、「既に増員する方向は決まっている。しかしこれを解決するには、まだ10年の歳月を要する。現状で解決する手立ての一つがチーム医療の推進である」と訴えている。


 チーム医療の評価について要望書は、「単に体制を評価するだけでは、患者の状態に関係なく看護師の数を集めて 7:1 入院基本料を算定したときと同じ状況になる可能性がある」とした上で、チーム医療の効果を測る指標として、患者の「重症度・看護必要度の改善率」を用いることを提案。「重症度・看護必要度は、既に導入されており、新たな負担を現場に求めるものではないので、指標としての導入は比較的容易であると考えている」と結んでいる。


 本記事を紹介したロハス・メディカル ブログ 看護必要度のほんとうのところ。に、次のようなコメントを投稿した。

 診療報酬に用いられている看護必要度には、次の4種類があります。
・ 「重症度に係る評価票」: ICU用、2002年度導入
・ 「重症度・看護必要度に係る評価票」: ハイケアユニット用、2004年度導入
・ 「一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価票」: 7対1入院基本料用、2008年度導入
・ 「日常生活機能評価」: 回復期リハビリテーション病棟用、2008年度導入


 回復期リハビリテーション病棟に導入された「重症患者回復病棟加算」は、「日常生活機能評価」10点以上を重症とし、重症群のうち3点以上改善したものが3割以上いることが要件となっています。在宅等復帰率等6割以上という要件とあわせ、回復期リハビリテーション病棟への成果主義導入ということで問題視されました。


 「一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価票」を、回復期リハビリテーション病棟で用いた「日常生活機能評価」と同様の目的で使用することが、今回、中医協で提案されたと考えれば分かりやすいと存じます。簡単に言えば、7対1入院基本料をとっている一般病棟にも成果主義を導入しようという提案です。


 問題は、「看護必要度」自体は、看護師の効果的な配置のために開発されたツールだということです。「一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価票」の点数が下がったことが、患者の状態が改善したことを意味しません。例えば、経口摂取を介助で行っている患者は看護の手間がかかると判断されますが、経管栄養となると「看護必要度」が下がったと判断されます。
 また、重症患者が多い病棟では、「一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価票」の点数が改善しないことも十分考えられます。そうなると、改善しやすい軽症患者が多い病棟の方が良質だという誤った判断を招きかねません。


 「一般病棟用の重症度・看護必要度に係る評価票」改善率を、病棟の機能評価に用いるという提案はきわめて危険なものです。


 一般病棟に成果主義が導入された場合、「看護必要度」改善率を低下させるような患者の選別が起こるおそれがある。現時点でも、誤嚥性肺炎を起こした要介護高齢者は敬遠されている。このような患者が多数入院する病院の経営が成り立たなくなる。外科系病棟でも困難が生じる。侵襲が大きい手術をした場合、入院時と比べ退院時の「看護必要度」は増大し、「重症度・看護必要度による改善率」が低下する。
 「医療の質に基づく支払い」(pay for performance;以下,P4P)が注目されている。しかし、国際的にみると、そのほとんどは外来医療におけるストラクチャーかプロセス指標である。P4Pを入院医療で、なおかつアウトカム指標で用いたのは、日本における回復期リハビリテーション病棟が初めてである。中医協の議論でも、回復期リハビリテーション病棟に対する成果主義について検証することが決まっている。
 そもそも、「看護必要度」は看護師配置のツールである。これを医療の成果評価に用いることは、明らかな目的外使用である。医療の質の評価に用いる臨床指標は、専門家集団が論議し、慎重に決めるべきである。代表的な臨床指標である悪性腫瘍の5年生存率でさえ、医療機関の質の評価に用いることに関し、専門家は慎重になっている。医療の全てのステージにおいて「重症度・看護必要度による改善率」がチーム医療の評価に適しているという考えは、看護協会幹部の妄想でしかない。

「介護の社会化」と逆行する認定調査がこの4月から始まる


 要介護認定改定に伴い、他者からの介助状況が調査項目に影響するようになった。「介助の方法」で判定する項目は、「介助が行われていない」と判断された場合には、「自立」を選択することになっている。この考え方は、病棟における看護師の手間をはかる手法として開発された「看護必要度」に酷似する。両者を比較する。

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 http://www.pref.mie.jp/CHOJUS/HP/kaisei/index.htm内にある要介護認定認定調査員テキスト2009 (1,922KB)17ページには次のような記載がある。

 上に示された調査項目には、(1)能力を確認して判定する(以下「能力」という)、(2)生活を営む上で他者からどのような介助が提供されているか(介助の方法)(以下「介助の方法」という)、あるいは(3)障害げ現象(行動)の有無(以下「有無」という)を確認して判定するというように、判定の基準が3軸ある。


 「介助の方法」で評価する調査項目には、次の16項目が含まれる。

  • 「1-10 洗身」
  • 「1-11 つめ切り」
  • 「2-1 移乗」
  • 「2-2 移動」
  • 「2-4 食事摂取」
  • 「2-5 排尿」
  • 「2-6 排便」
  • 「2-7 口腔清潔」
  • 「2-8 洗顔
  • 「2-9 整髪」
  • 「2-10 上衣の着脱」
  • 「2-11 ズボン等の着脱」
  • 「5-1 薬の内服」
  • 「5-2 金銭の管理」
  • 「5-5 買い物」
  • 「5-6 簡単な調理」

 一方、回復期リハビリテーション病棟で用いられる「日常生活機能指標」=ハイケアユニット用「重症度・看護必要度(B得点)」には次の13項目が含まれる。「介助の方法」で評価する調査項目と同じものを赤字で示す。

  • 床上安静の指示
  • どちらかの手を胸元まで持ち上げられる
  • 寝返り
  • 起き上がり
  • 座位
  • 移乗
  • 移動方法(主要なもの一つ)
  • 口腔清潔
  • 食事摂取
  • 衣服の着脱
  • 他者への意思の伝達
  • 診療・療養上の指示が通じる
  • 危険行動への対応


 医学書院/週刊医学界新聞(第2805号 2008年11月10日)で、石川誠氏は次のような指摘をしている。

 「日常生活機能評価」を使うことになったのは,厚労省の意図的な戦略だと思います。これまで「重症度・看護必要度」は特定集中治療室管理料とハイケアユニット入院医療管理料で使われていましたが,7対1看護に導入され,急性期病院では看護必要度のチェックが必須事項となりました。このなかのB項目が「日常生活機能評価」として回復期リハ病棟に導入されたのです。


 また介護保険の分野では,9月に開始した介護認定のモデル事業で新たな要介護度の認定調査項目となる動きがあり,そこに看護必要度の項目が入ります。つまり,急性期の「重症度・看護必要度」,回復期リハ病棟の「日常生活機能評価」,介護保険の「要介護度」がつながるのです。国は,急性期から長期・慢性期まで継続的に手のかかり具合を測りたかったのだと思います。


 石川誠氏の問題意識を当初理解できなかった。今回、「介助の方法」で評価する調査項目と日常生活機能評価との比較を行い、疑問が氷解した。少なくとも、「移乗」、「移動」、「口腔清潔」、食事摂取」、「衣服の着脱」の5項目に関しては、回復期リハビリテーション病棟との比較が可能となる。
 「看護必要度」は、あくまでも看護師の効率的な配置を検討するために作られたツールである。その「看護必要度」をADL指標と同じように扱うという過ちを犯したため、回復期リハビリテーション病棟は混乱に陥っている。厚顔無恥というべきか、介護分野にまで「看護必要度」が導入されようとしている。


 今回の介護保険改定では、常時、介助を提供する者がいない場合にだけ、「不足となっている介助に基づいて基本調査の選択を行うという例外的な措置をとる。」となっている。しかも、「独居、日中独居、同居者も要介護状態にあり介助を行うことができない場合、及び同居介護者の虐待による介護放棄」を具体例としてあげている。
 介護熱心な家族がいる場合には、要介護認定が下がる仕組みが作られ、公的な介護サービスは必要ないと判断されることになった。「介護の社会化」と逆行する認定調査がこの4月から始まる。

回復期リハ病棟では、看護業務の2割が「リハ」

 全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会第7巻第3号(通巻26号)に、「回復期リハ病棟における提供サービスの実態と今後の課題 −他計式1分間タイムスタディ調査結果をもとに」という調査報告(講演要旨)が載った。筒井孝子氏と東野定律氏が分担して報告をしている。この報告の中で、回復期リハビリテーション病棟における看護業務の特徴が紹介されている。


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# 職員に対するタイムスタディ調査のポイント(対象職員:337名)
 看護師1人あたりの総看護業務提供時間は平均483.6分。

  • 「療養上の世話」が29.9%
  • 与薬、治療、処置などの「専門的看護」が4.0%
  • 機能訓練など「リハビリテーション」が20.8%
  • 残りは「行事、連絡、調整、報告、会議、研修など」看護関連業務が45.2%


# 患者に対するタイムスタディ調査のポイント(対象患者:58名)

  • 「専門的看護」では、明らかに「7対1」「10対1」のほうが「回復期」よりも提供時間が長い。
  • リハビリテーション」では、「回復期」が「7対1」「10対1」の10倍近く提供時間が長くかかっている。


 本講演では、「日常生活機能評価」を用いて、回復期リハ病棟間に重症度の差があることや患者の改善度を見ている。一方、「重症度に係る評価票」(ICU用)、「重症度・看護必要度に係る評価票」(ハイケアユニット用)の2種類を組み合わせ、回復期リハ病棟の看護師配置数を算定し、実配置数と比較するという試みを行っている。


 「看護必要度」とは、「入院患者に提供されるべき看護の必要量」をいう。「看護必要度」を正確に把握し、適切な看護師配置を評価するために用いられる。いわば、科学的根拠に基づく要員管理のツールである。しかし、実際に調査を行った対象は、ICUやハイケアユニットであり、回復期リハビリテーション病棟ではない。
 1分間タイムスタディで明らかになったことは、回復期リハビリテーション病棟で働く看護職の業務が、「7対1」「10対1」の看護業務は明らかに異なっていることである。ICUやハイケアユニット用の「看護必要度」を用いて、回復期リハビリテーション病棟の看護師配置数を算定することは誤りである。
 「重症度・看護必要度に係る評価票」(ハイケアユニット用)のB得点を、「日常生活機能評価」という名前に変更し、ADL評価のような体裁で評価するという恣意的な改変がなされた。石川誠氏の発言にもあるように、「日常生活機能評価」とFIMやBarthel IndexのようなADL評価には互換性があるとは言い難い。言い換えると、日常生活機能評価はADL評価として妥当性に欠けることを、「看護必要度」開発メンバーや厚労省官僚が理解しないといけない。

石川誠氏が語る日常生活機能評価の問題点

 医学書院/週刊医学界新聞 第2805号 2008年11月10日、(『総合リハビリテーション』第36巻11号より)  2008年の医療制度改革を語るに、二木立氏、石川誠氏、近藤克則氏の鼎談より、石川誠氏が日常生活機能評価の問題点を次のように語っている。


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石川 1つは質の評価として出てきた「日常生活機能評価」です。リハ領域ではBarthel Index(以下,BI)やFunctional Independence Measure(以下,FIM)を使っていますが,「これらはどう違うのか」という議論が起こったため,協議会で「日常生活機能評価」とFIMの関係を検証しました。その結果,両者の間には互換性があるとは言い難いことがわかりました。「日常生活機能評価」は看護必要度(必要看護人員の算定ツール)なのです。ですから協議会では,BI,FIMとはそもそも視点の異なる評価であると考え,両方を調べるように主張しています。

 「日常生活機能評価」を使うことになったのは,厚労省の意図的な戦略だと思います。これまで「重症度・看護必要度」は特定集中治療室管理料とハイケアユニット入院医療管理料で使われていましたが,7対1看護に導入され,急性期病院では看護必要度のチェックが必須事項となりました。このなかのB項目が「日常生活機能評価」として回復期リハ病棟に導入されたのです。


 また介護保険の分野では,9月に開始した介護認定のモデル事業で新たな要介護度の認定調査項目となる動きがあり,そこに看護必要度の項目が入ります。つまり,急性期の「重症度・看護必要度」,回復期リハ病棟の「日常生活機能評価」,介護保険の「要介護度」がつながるのです。国は,急性期から長期・慢性期まで継続的に手のかかり具合を測りたかったのだと思います。

 これまで、本ブログで主張してきた内容とほぼ同じ問題点を石川誠氏が指摘している。毎年行われる全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会のデータをもとに、ADL指標と看護必要度との違いを検証しようという戦略を描いているように思われる。
 「看護必要度」を介護保険の要介護認定まで使用しようという企みがあるということは初めて知った。ICUやハイケアユニットにおける看護要員数を算定するツールが、とめどもなく暴走し始めている。

回復期リハビリテーション病棟急増の背景ほか

 久しぶりに回復期リハビリテーション病棟関係のニュースが届いた。m3ニュース(2008年6月23日)より。

全国回復期リハ連絡協/回復期リハ病棟入院料1 5月時点で96施設が算定 回復期リハ病棟の質評価に迅速対応


記事:Japan Medicine
提供:じほう
【2008年6月23日】


 2008年度診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟に質の評価が試行的に導入され、5月1日時点で質が評価された施設が算定する回復期リハビリテーション病棟入院料1(1690点)を届け出・算定している施設が、96病院に上ることが、全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会(会長=石川誠・初台リハビリテーション病院理事長)の中間集計で分かった。厚生労働省は、9月30日まで改定前の入院料(1680点)の算定が可能な経過措置を取っているが、医療現場では、急性期病院を中心に迅速な対応となっている。


●回復期リハ病床は5万床の時代へ


 今回の回復期リハビリテーション病棟の質の評価の試行は、診療のアウトカムを診療報酬として評価する新たな試みだ。
 具体的な回復期リハビリテーション病棟の質的評価は、改定前の回復期リハビリテーション病棟入院料・1680点が、改定後には、同入院料1・1690点と、同入院料2・1595点に層別化された。同入院料1については、新たな要件として<1>当該病棟の新規入院患者のうち1割5分以上が重症患者であること<2>退院患者のうち在宅復帰が6割以上であること-を追加。さらに重症患者回復病棟加算が加われば、1日につき50点が上乗せされる。ただし、経過措置として、同入院料2の低い点数算定施設では、9月末までを期限として、改定前の1680点を算定できる仕組みだ。
 そこで、全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会は、回復期リハビリテーション病棟の5月1日時点の届け出状況について全国調査を進めている。18日時点では、47都道府県の社会保険事務局のうち約8割の回答を得た。
 その結果、回復期リハビリテーション病棟入院料1の算定は96病院、同入院料2が552病院だった。病棟単位では1000病棟を超す見通しだ。回復期リハビリテーション病床数で見ると約4万6000床。残り約2割の調査結果が追加されれば、回復期リハビリテーションの病床数は5万床の時代に突入する見通しだ。


●入院料2の届け出は552施設 入院料1への移行も


 回復期リハビリテーション病棟入院料2を届け出ている552施設は、直近6カ月のデータがまとまれば、同入院料1の算定に移行することが可能なため、同協議会では、10月に向けて同入院料2から同入院料1へのアップも進むとみている。
 石川会長は、「まだ中間集計だが、急性期病院が入院基本料7対1の算定要件の看護必要度調査とともに、急性期病院における回復期リハ病棟の日常生活機能評価への対応を進めたことが算定につながっているのではないか」とみている。回復期リハビリテーション5万床時代への見通しがついたことについて石川会長は、今回の診療報酬改定で医師の専従配置要件を外し、基準を緩和したことが回復期リハ病床の増加につながったと分析している。
 ただ石川会長は、診療行為の質をアップして重症患者の受け入れを積極的に進め在宅復帰率を高めるためには、マンパワーを充実させることが必要だと指摘。回復期リハビリテーション病床数が増加していく中で、同入院料1を算定する病棟が看護・介護スタッフおよびリハスタッフ(言語聴覚士・社会福祉士を含む)の投入をおざなりにしていけば、リハ医療の将来に禍根を残すのではないかと懸念を示した。その点からも同協議会では、今後も、アウトカムとプロセス両面から質的向上を求めていく考えだ。


●地域連携診療計画で定着した看護必要度の概念


 さらに今回の改定では、地域連携診療計画退院時指導料を算定する場合、急性期病院の入院基本料7:1の看護必要度B項目は7項目で、日常生活機能評価(いわゆる看護必要度)の13項目とは異なるため、情報提供ができないのではないかとの懸念が示されていた。厚労省は地域連携診療計画退院時指導料を算定する場合には、7:1看護の急性期病棟から、回復期リハ病棟に転院する患者に関して、退院時には日常生活機能評価の13 項目をチェックしなければならない-との解釈を示している。
 こうした点からも、地域連携パスの受け皿ともなる回復期リハビリテーション病棟では、日常生活機能評価が、急性期病院との1つの連携ツールとして位置付けられ、質の評価への取り組みを円滑にしている側面が垣間見れる。


ADL的リハ、6単位上限の例外規定も評価


 5月30日付の通知で厚労省保険局医療課は、厚労大臣が定める場所であれば、1日6単位までの規定が、9単位まで実施できる措置を取る考えを示した。通知の意義について石川会長は、「ADL加算が排除されたが、病棟ADLを実施すれば9単位提供できることは患者にとってメリットが高い。特に小児に対するリハサービスにおいて効果的と考えられる」と評価している。
  一方、08年度診療報酬改定では、特殊疾患病棟入院料と障害者施設等入院基本料の算定要件だった「重度の肢体不自由児(者)または脊髄損傷等の重度障害者」から、脳卒中患者らが10月から除外されることになった。医療現場から批判も出ているが、石川会長は概念としては間違った方向ではないとの見方を示している。


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 ネタ元の記事に不満が残る。貴重なデータを示しているが、分析力に問題がある。石川誠会長の意見を不十分な形で紹介するだけに留まっており、自分で判断しようとしていない。仕方がないので、推測を交えながら記事の内容を解釈する。


(1)病棟数、病床数推移について
 全国回復期リハビリテーション病院協議会ホームページ内に、病棟数・病床数資料がある。年度毎病床届け出数・累計数年度毎病棟届け出数・累計数を用い、表を作成した。その上で、記事にあるデータを追加した。なお、ホームページには、2008年5月との記載があるが、データ自体は2007年11月時点と変化がない。まもなく、データが追加されると推測する。

病床届出数 病床数累計 病棟数累計
2000年度  3,645   3,645   71
2001年度  4,103   7,748  157
2002年度  7,297  15.045  314
2003年度  8,399  23,444  500
2004年度  4,462  27,906  601
2005年度  2,761  30,667  664
2006年度  9,654  40,321  888
2007年11月  1,853  42,174  937
2008年5月  ? 46,000床+α 1,000超


 表をみて最も気づくことは、2006年度と比し、2008年度5月推計で病床数が6,000〜10,000床近く、病棟数も100以上増えていることである。この増加数は、2003年度、2006年度に匹敵する。2003年度は医療法に基づき、一般病棟と療養病棟の区分が明確化された。2006年度は療養病床入院料の大幅な引き下げが実行された。いずれも、国の医療制度に対応して、病床区分の変更を余儀なくされた年である。では、なぜ、2008年度になって回復期リハビリテーション病棟が増えているのだろう。
 本来なら、どの病棟類型からの移行が多いか調査をしなければならないが、推測は可能である。障害者施設等病棟からの回復期リハビリテーション病棟への転換が増えたと予想する。「特殊疾患病棟入院料と障害者施設等入院基本料の算定要件だった「重度の肢体不自由児(者)または脊髄損傷等の重度障害者」から、脳卒中患者らが10月から除外されることになった。」ため、リハビリテーション病棟的性格をもった障害者施設等病棟が移行したと考える。
 回復期リハビリテーション病棟急増の背景には、明らかに、厚労省の政策誘導がある。


(2)回復期リハビリテーション病棟入院料1算定状況
 「回復期リハビリテーション病棟入院料1の算定は96病院、同入院料2が552病院だった。」との記載があるが、これは明らかに表現がおかしい。おそらく、入院料1以外は全て入院料2だろうと、記者が勝手に解釈したのだろう。2008年9月までは移行措置があり、以前の回復期リハビリテーション病棟入院料(1,680点)対象病棟に留まっているだけである。一方、新規参入病棟は、入院料2で請求せざるをえない。両者が異なっていることを理解していない。
 回復期リハビリテーション病棟は、全体で700施設-1,000病棟-50,000床といったところが実態に近い。このうち約100施設が入院料1を既に算定している。大まかに計算すると、7施設に1施設の割合となる。これだけ診療報酬に違いがあれば、入院料1の方に雪崩を打つように移行するのも当たり前である。
 医療の質は、ストラクチャー、プロセス、アウトカムで決まる。今回は、スタッフ数とチーム医療の充実というストラクチャーやプロセスとは全く無関係に、アウトカムだけで診療報酬が決まった。石川会長の言うとおり、「リハ医療の将来に禍根を残すのではないかと懸念」が強い。このことに関し、回復期リハビリテーション病棟への成果主義導入に反対する意見も紹介すれば、記事に深みが出たはずだが、残念である。


(3)看護必要度、日常生活機能評価の定着
 この件に関しては、看護必要度の弊害(まとめ)をご覧いただきたい。強制されたから、仕方なく実施しているだけであろう。様々な種類の看護必要度をとらされる労力を考えると、現場の看護スタッフが本当に気の毒である。


(4)ADL的リハ、6単位上限の例外規定も評価
 「ADL加算が排除されたが、病棟ADLを実施すれば9単位提供できることは患者にとってメリットが高い。特に小児に対するリハサービスにおいて効果的と考えられる」という石川会長のコメントを拝見して、得心が行った。急性期や回復期のリハビリテーションだけを扱っていると気がつかない。同様に、神経難病の患者さんたちにとっても、意味がある解釈変更だったと考える。


(5)障害者施設等病棟の件
 「医療現場から批判も出ているが、石川会長は概念としては間違った方向ではないとの見方を示している。」という表現では、流石の私でも論評ができない。記者のまとめる能力の問題としか言いようがない。
 おそらく、障害者施設等病棟の見直し(まとめ)で私が述べたことと同じようなスタンスで、石川会長は発言したのではないかと推測する。
  「脳卒中患者の行き場がない」 などのエントリーで、厚労省の政策を痛烈に批判した。結論部分をあらためて繰り返す。

 回復期リハビリテーション病棟への成果主義の導入+療養病棟入院基本料引き下げ+障害者施設等病棟要件である重度の肢体不自由からの脳卒中の除外により、「脳卒中患者の行き場がなくなる」ことは、残念ながら、第一線で苦労しているリハビリテーション医以外にはおそらく知られていない。


 障害者施設等病棟の要件変更は、それ自体だけでは問題点は明らかではないが、種々の診療報酬変更が組み合わされることによって有害な影響を及ぼす。到底、「間違った方向ではない」と認めることはできない。